総合広告代理店に限らず、ネット系代理店においては当然のこと、B2B全体に言えることだとも思うが、クライアントを担当する営業マンが成果に大きな影響を与えている。広告代理店内での評価では、売り上げを多く作ってくれる営業マンが評価されるが、短期的な売上だけを求めて、広告主に大量に広告を出稿させるなどしても、その後のビジネス成果が出なかった場合は、広告主から不信感を抱かれることになり結果的に担当変更の依頼を受けたりする。著者も、17年勤めた総合広告代理店時代に、この「担当者ミスマッチ」をいくつも目の当たりにしてきた。広告主と広告代理店のパイプ役、そしてプロモーション戦略の全体設計責任を担うはずの営業と広告主の関係はどうあるべきなのかについて、本稿では説明していく。
目次:広告業務の諸悪の根源は担当者ミスマッチにある
担当者を選べない、B2Bの原則
広告主と広告代理店とのビジネスにおいて、例えばコンペを行う際には、各広告代理店は提案内容と体制図と見積もりを提示して業務を受注することになる。広告主もその点を評価して採用社を決めることになるが、著者はこの評価点について大いなる疑問を抱いてきた。広告業務は、極めて属人的なビジネスである。人によって、スピード感や正確性や知識・経験や人脈などが全く異なる。広告主はそれを理解していて、ストラテジックプランナーやクリエイターなどのスタッフについては過去の業務内容がわかるプロフィールを提出することが当たり前になっている。しかし、そのスタッフたちをアサインしてコントロールするのは営業担当であり、そのコントロール次第では優秀なスタッフも力を発揮できず、逆にコントロールさえ良ければ今までの業務がさほど注目を浴びていなかったスタッフですら、一級品の輝きを得ることもある。その重要な営業担当者を、広告主は選べないのだ。担当変更の依頼はかけられるが、取引前に最重要パーソンを選べないということにずっと違和感を覚えていた。
優秀な営業マンを引き当てるかどうか
さらにいうと、大手の方が優秀な営業が多いかというと決してそうではない。会社の規模を問わず、優秀な人間もそうでない人間も存在する。同時に、役職もほとんど無関係である。非資格専門職である広告代理店においても、大手となると、いわゆる社内営業力の高い人間が役職に就くこともあり、立場があるからと言って広告主にとって「優秀」というわけではないのある。これはどの企業においても言えることであろう。つまり、広告主は、良い営業マンを引き当てられるかどうかは「運」次第な色合いも強いのである。
優秀かどうかを決めるのは相性と、スキルと、経験
昨今では広告主の担当者として営業もプロフィールを提出することも増えてきたが、広告主とのかかわりの中で、連絡係を務めてきたのか、接待要員を務めてきたのか、ゴルフ要員を務めてきたのか、はたまたソリューション営業タイプだったのかはプロフィールから読み取ることはできない。この広告代理店営業タイプは「広告主の最大の悩み~「担当営業を選べない」~」をご覧いただきたい。大手広告主であり、メジャーなブランドを担当してきたとしても、その関わり方が作業請負的であったのか、一部限定での業務だったのかによっても、大きく異なる。しかしながら重要なのは、広告主が求めるスキルと広告代理店営業マンが提供するスキルが合致しさえすれば良いのであって、相性の域を出ない。スキルと経験も、広告主が求める領域のスキルと経験があれば良いのであって、それもニーズが合致するか否かだけである。
営業マンの相性やスキルや経験を事前に把握できない
広告主と広告代理店営業マンとの相性チェックやスキル・経験チェックは事前にできない。そこが大きな問題点だと著者は考えている。広告主においても、提案された内容が完遂されなかったり、当初見積もりと事後見積もりが大きく変わってしまうなどで声を荒げ、担当変更を要求することもあるが、そもそもそれは契約時点でのミスマッチに大きな問題があることを認識してほしいものだ。
商慣習上、すぐには解決に至らない問題点だとも思うが、広告は世界からなくならない。広告代理店という存在がどう変わっていくのかはわからないが、広告がなくならないのは絶対だと著者は考えている。「広告トータルプランニング会社」である当社でも、この問題の解決策について検討していくつもりだ。今後、こういったミスマッチが少しでも是正されていくことを切に望んでいる。
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