top of page

広告に、プロダクト・ライフ・サイクルの視点を

執筆者の写真: バイタイム_西村 昭二バイタイム_西村 昭二

更新日:2023年3月29日

大学に進学し、経営学部や商学部に通っていた方は、一度は授業で「プロダクト・ライフ・サイクル」、通称PLCについて勉強したことがあるだろう。それくらい、ビジネスにおいてベーシックなフレームワークである。しかしながら、17年勤めた総合広告代理店時代に、著者以外には一度として「PLC」を使っていることを見たことはなかった。商品の移り変わりが早い今こそ、その重要性を増していると著者は考えている。本稿ではその理由について説明していく。


本稿はこのような方におススメ!


✔ 広告にもプロダクト・ライフ・サイクルの適用が必要ではないかとお考えの方

✔ 広告代理店の提案がなぜだかズレているように思えてしまう方

✔ データではなく予め先々を予想して広告戦略を組みたい方


目次:広告に、プロダクト・ライフ・サイクルの視点を


プロダクト・ライフ・サイクルとは

プロダクト、つまり商品にも寿命がある。そして、伸び盛りの時期や衰えの時期を経て、その人生を全うするのである。少ブランド多品種少量生産時代の昨今において、商品の寿命はどんどん短くなり、新たな商品がどんどん生まれてくる。PLC、プロダクト・ライフ・サイクルとは、1950年にジョエル・ティーンが提唱した理論である。商品が市場に投入されてから、寿命を迎えるまでのサイクルを体系づけたもので、導入期、成長期、成熟期、衰退期の4つに分け、それぞれの段階における「あるべき」戦略を示したものだ。



各段階の簡単な説明

導入期は、需要も小さく売り上げも大きくない。先行投資の、たとえば開発費などがかかり、利益創出を狙える段階ではない。成長期は、売上と利益が急拡大する段階で、競合社も増える。消費者ニーズも多様化し、商品も多角化する。成熟期は、市場成長が鈍化し、リーダーはシェア維持を目指しつつ、他市場への進出を検討し始める時期でもある。衰退期は、値引きが頻繁に起こり、売上も利益も減少し始め、既存顧客にいかに多く購入してもらうかを考える時期である。この時期に市場撤退を決定することが多い。


PLCに適したプロモーションとは

導入期、成長期、成熟期、衰退期のそれぞれで、狙うべきターゲットは新規顧客なのか既存顧客なのかが明確に異なる。また、戦術としてPRなのか広告なのかSPなのかオウンドなのかの、中心となるプロモーション施策も、すべて異なる。当社では「PLC MIX」としてそれらを整理しているが、PLCに適したプロモーション施策は明確に存在する。つまり、PLCで商品の現状と今後の行く末、市場環境、競合環境などの未来予測を行うことが大切なのである。


ますます重要性を増すPLC

少ブランド多品種少量生産の昨今において、数多の新商品が生まれ、すぐにその新商品は終売を迎えていく。つまり、PLCが極めて速くなっているのだ。かつては、PLCの各段階に入るまでに時間がかかり、PLCを意識せずとも熟考を重ねさえすれば、次期戦略を描くことができた。しかしながら、工場投資にしても設備投資にしてもシステム投資にしても、数年の時間を要する可能性が高いため、PLCによって商品の行く末を読み、先回りして準備しておくことが必要なのである。



PLCが軽視されている理由

別稿でも説明しているように、現代ではフレームワーク自体が軽視され、データが重視されている。最も大事なフレークワークの一つであるPLCが、重要性を増しているのに、特に総合広告代理店の社内や企画書でPLCの「P」の字も登場しないのは、極めて不思議だと著者は感じていた。同時に、社内でPLCの教育が実施されていないことも不思議で仕方なかった。著者は自ら文献などから独学をして、独自のフレームワーク「PLC MIX」の設計を行うに至ったが、本来であれば基本スペックとして社内教育されるべきではないかと思っていた。


PLCの視点を持って、商品の現在地点を的確にとらえ、次の在り方を読んでいく。そのことで、ますますビジネスをスピーディにキャッチアップし、先回りする。この視点への気づきを速め適切なプロモーション戦略を実行してもらうための相談相手として「広告トータルプランニング会社」である当社を設立した著者としては、PLC視点によって投資対効果の高いプロモーションが世の中に増えることを期待している。


Comments


bottom of page